翌朝、目が覚めてみると、水はすっかり引いて、窓の前の芝生に残った水たまりに、大きな銀色 のものが飛びはねていました。
それはトービーがよく餌をやっていたというコイで、ボギスによれば、 きっと何百歳にもなっているに違いないということでした。
トービーはよく習っていたラテン語で コイに語りかけ、弟のアレクサンダーは、フルートを吹いて、鳥たちと話していたといいます。
水が引いた庭の探険に出かけてみると、大きな背の高い石像があったり、木を刈りこんで形をつけた緑の鹿がいました。
鹿には目がありませんでしたが、耳をピンとそば立て、まるで生きているもののようでした。
大きなブナの木の下には、イチイの木を刈りこんで作ったリスがいたし、クジャクや野ウサ ギや、おんどりやめんどりまで、木から作られていて、そのまわりを、ほんものの生きたウサギが走り抜けました。
そのうちに、どうも自分の傍に誰かがいるような気がして、これはきっと、かくれんぼの遊びかもしれないと思いあたります。
そこで大声で、「みどりの鹿が、かくれ場所だ!」と叫んで、鹿のところまで走って行きます。
そのときに間違いなく、誰かがすぐ傍で息を殺して笑っている声がきこえたように思いました。
しかし姿はなくて、頭になにかがさわったので手をやってみると、彼の頭文字のTの形にこしらえた枯枝が乗っていました。